第二次大戦中、ナチスの占領下のゲットーで、ある男の嘘による「想像のラジオニュース」が人々に生きる勇気を与えていく感動的なヒューマンドラマ。原作はユーレク・ベッカーの『ほらふきヤーコプ』(同学社刊)で、74年にも「嘘つきヤコブ」として映画化されている(ベルリン映画祭で銀熊賞、ウラディミール・ブロドスキが主演男優賞)。監督はハンガリー出身のユダヤ人で自身もホロコーストの生き残りであるピーター・カソヴィッツ。製作総指揮は主演のロビン・ウィリアムス。脚本はカソヴィッツ監督と、フランスの小説家・脚本家ディディア・ディコイン。撮影はハンガリー出身のエルマー・ラガリ。音楽はエドワード・シャローム。美術はルチアナ・アリギ。編集はクレア・シンプソン。
監督:ピーター・カソヴィッツ
出演:ロビン・ウィリアムス、アラン・アーキン、ボブ・バラバン、マチュー・カソヴィッツ
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聖なる嘘つき/その名はジェイコブ (1999)のストーリー
1944年、ナチス占領下のポーランドのゲットー。外界のニュースを求めて新聞紙を追ったユダヤ人ジェイコブ(ロビン・ウィリアムス)は、ゲットーの塀の前で衛兵に止められ、夜間外出禁止令に反したとして司令部に出頭を命じられる。無人の司令部事務所に入って行ったジェイコブはラジオ放送から、この町から400キロ先にあるベザニカでドイツ軍がソ連軍と交戦したというそのニュースを耳にする。ポーランドまでソ連軍が進攻してきたことを知ったジェイコブは思わず笑みを浮かべる。やがて事務所から帰されたジェイコブは、収容所に送られる列車から逃げ出してきたリーナ(ハンナ・テイラー・ゴードン)と出会うい、屋根裏に彼女を匿うことにする。ゲットーの仲間たちはもうほとんど収容所に送られてしい、ジェイコブの妻ハンナも射殺された。残された住人は外界から遮断され、ラジオを持つことも禁じられている。ジェイコブは夜が明けると、早速咋夜のニュースを自殺願望のある床屋の友人コワルスキー(ボブ・バラバン)や何人かの知り合いに伝えた。そのニュースは、ジェイコブがラジオを持っているという噂と共に、たちまちゲットー中に広まっていった。ニュースの続報をしつこく聞かれたジェイコブは、ドイツ軍がソ連に反撃するために東に向かっていると、口から出まかせの戦況を伝える。そのニュースを、収容所へと向かう貨車に乗っているユダヤ人たちに教えようとしたハーシェル(マチュー・カソヴィッツ)はナチスの兵士に射殺されてしまう。白分は嘘がハーシェルを死に至らしめたと、ジェイコブは悩むが、住人たちはますますニュースを欲するようになる。ジェイコブは苦し紛れに嘘の上塗りを続け、ラジオ・レポートはどんどんエスカレートしていく。ある日、リーナが病気になり、ジェイコブはリーナを元気づけるために、良くなったらラジオを聞かせると約束する。やがて回復したリーナに、ジェイコブは約束を果たすため、チャーチルの声色を使ってBBC放送を演じてみせる。ゲットーの住人たちは抵抗組織を作ることを思いつく。組織作りの集会で、ジェイコブはリーダーに選ばれる。が、その時ゲシュタポが心臓を病んでいる将軍の命令でゲットーの医師を連れに来た。しかも、将軍は町で話題になっているラジオの持ち主を密告するように迫る。医師は毒薬をあおって自殺するが、将軍はラジオの持ち主の捜索に乗り出し、本人が出頭しなければ人質10人を殺すと言う。ジェイコブはラジオのニュースを聞いたいきさつをコワルスキーに告白、そして司令部に事実を話しに行くことを決意する。コワルスキーは真実を知って首を吊り、残された住人たちは列車へと追い立てられていく。連合軍の進攻で、町のゲシュタポは撤退の準備を始めていたのだ。司令部でラジオのニュースを偶然聞いた事実を将校に語ったジェイコブは、住民たちの前でラジオのニュースも抵抗運動も、みな嘘だったと言うように強要される。駅の司令台の上へと引き立てられるジェイコブは、嘘をつき通して人々に生きる希望を与えることを選ぶのだった。